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家族の絆


タイトル:家族の絆
担当:長谷川 泰三
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和男さん(仮名)は30代半ばの男性で、
中学生の女の子と小学生の男の子のお父さんでした。


「娘が全然いうことをきかなくて...」


彼は中学生の娘さんが最近、反抗的で親子ゲンカばかりしていまうということを話してくれました。


「つい“カーッ”となって手をあげてしまうこともあるんです。自分でも最低だなって思います」

「そんな自分を責めているんですね」

「・・・・・・」

「どんな時によくケンカしますか?」

「はい... 大体が夕飯の時なんです」


彼の家では夕飯に関して絶対の“決り事”があるらしいのです。

それを最近、娘さんが守らないのでケンカになってしまうということでした。


「それで、その“決り事”って何なのですか?」

「そっそれは、7時に皆そろって“頂きます”ってやることなんです。へっ変ですか?」

「ははっ(笑) すいません、ごめんなさい。イイじゃないですか、皆でそろって頂きますですか」

「もう、笑わないでくださいよ。笑われるからあんまり人には言いたくなかったんです」

「すいません(笑) でもあったかくて、のどかな感じがしてイイと思いますけど」

「それが、あんまりのどかでもないんです...」


子供が小さい頃はまだ よかったのですが、娘さんも最近は友達との付き合いがあったりして
7時には帰ってこないときがあるのだそうです。


「夕飯に皆そろわないと幸せが崩れてしまいそうで、どうしてもきつく叱ってしまうのです」

「どうしてそんなに皆そろうことにこだわるのですか?」

「それは...」


和男さんは子供のころ 施設に預けられていたそうです。

家族というものを知らない彼は、自分の家族というものを強く求めたということでした。

そして早くに結婚をし 子供をもうけ、自分の家族というものを手にしたのです。

しかし、和男さんはど のようにして子供と関わっていけばイイのかが分からなかったそうです。

そんなときにある出来事を思いだしました。昔、友人に夕飯に誘ってもらったそうです。

家族が皆そろってワイワイガヤガヤいろんな話しをしながらとても楽しい食事だったそうです。

こんなに楽しい食事は初めてだと思った和男さんは皆がとても幸せそうに見えたのだそうです。

「なるほど、それで7時に皆で頂きますですか」

「自分には経験がなかったもので... きっと家族というものは皆で楽しく夕飯食べながら...
これが幸せなんだって思ったんです」


家族の幸せというものがどんなものか知らなかった彼は、両親からもらえなかったモノの中に
“家族の幸せ”があるんだと思いました。

休日は家族と一緒... 皆で旅行に行ったり... 遊園地に出かけたり... 本当に彼は頑張りました。

仲のイイ家族、幸せな家族を作るために一所懸命頑張ったのです。

彼が両親からもらえなかったモノを子供達に与えてきたの です。


「子供達が喜ぶと思ってやっていたんですが、喜ぶどころか鬱陶しいって言われる始末です」

「毎週、毎週じゃ子供達も友達と遊ぶヒマがないんじゃないですか?」

「はい、そう言われます。ですから休日に一緒にどこかへ出かけるっていうのはひかえています。
でも夕飯は一緒に...」

「それだけは譲れないのですね(笑)」

「はい... そして子供達は離れていくばかりなのです」


昨日も7時の夕飯に遅 れた娘を叩いてしまって、奥さんからも下の息子さんからも白い目で見られ、
娘さんは泣いてるし、最悪で最低の“頂きます”だったそうです。


「家族がうまく行かないのも私が施設育ちだからでしょうか?」

「どうしてそう思うのですか?」

「同じ施設を出た仲間達も家族のことで悩んでいる人が多いもので...」

「なるほど、それは自分が親に傷付いた分、子供に対して完璧な親にならなくてはいけないって
思うからではないでしょうか?」

「確かにそんな感じがします」


和男さんも完璧な親に なるために頑張っています。

親からもらえなかっ たものを一所懸命子供に与えようとしています。

それはとてもイイことなのですが、ただその原動力が“親に対しての恨み”というものだったとしたら
うまくはいきません。

そうなると加減がきかないのです。

やり過ぎてしまうのです。

イイことをしながらも同時に誰かを攻撃している... 片手で花束を持ちながらもう片手のピストルで誰かを
打っているようなものです。

和男さんは誰かを許す必要があるみたいですね

「えっ? 許す? 誰をですか?」

「貴方に家族の幸せというものを教えてくれなかった人ですよ」

「それは両親ということですか?」

「はい、そうです」

「両親... 残念ながらあまりお話しすることはありません。一緒にいませんでしたから」

「そうですね、そして一緒にいてくれなかったことを怒っていませんか?」

「今はもう怒ってなんかいません!!」

「そう言いながらも今怒ってませんか?」

「・・・・・」

「貴方は家族の絆を作るために頑張ってきました。とてもイイことをたくさんしてきました。
でもそれがうまくいかないときは“それをやっている動機”を考えてみてください」

「それは親が私にしてくれなかったからです! 私はずっと寂しい思いをしてきました。
私はあんな親にはなりたくありません!」

「確かに貴方は正しいことをしています。でもそこに恨みはありませんか?」

「・・・・・・」

「せっかくイイことをしているのに、親への攻撃を目的にしていませんか?」

「そうです! それがいけないのですか!!」

「いけないことはありません。しかしそうなると貴方は親として“やらねばいけない”ことが多くなるでしょうね。
それも完璧に、もし出来なかったらあの親と同じになってしまうと思うでしょうから」

「そうです。無責任な自分の親と同じにならないように頑張ってきました」

「それは私も認めます。本当に頑張ってきましたよね。でもうまくいかない...」

「はい、一体どうしたらイイのでしょうか...」

「そうですね。動機と目的を変えましょう

「そうするとうまくいくのですか?」

「はい、イイこと正しいことをしていてうまくいかないときは動機や目的を変えるとうまくいくも のですよ。
どうですか、やってみますか?」

「はい、それで家族がうまくいくならやります。一体どうすればイイのですか?」

「ではやってみましょう。方法はまかせてもらえますか? まあ簡単に言うとイメージの力を借りるのです」

「イメージの力ですか.. 」

「はい、心の中でお父さんやお母さんに出会っていくんですよ」

「何かイヤな感じですが、それで家族とうまくいくのならやってみます」

「軽く目を閉じて、大きく深呼吸をして... リラックスして.... 子供のころを思い出してくだ さい。
一番寂しかった、辛かったときのことです。何才の貴方が見えますか?」

「8才のころの私です... 施設に預けられて、皆にとけ込めずに一人でいます」

「その子の気持ちが分かりますか?」

「不安... 寂しい... お父さん、お母さんが恋しい...」

「その子の親になったつもりでその子供を見てあげてください。貴方のお子さんを見るように
その子を見てあげてください」

「・・・・・・」


彼は涙を流していました。


「今どんな気持ちですか?」

「この子を助けてあげたい! 抱き締めてあげたい!」

それが、貴方のご両親の気持ちですよ。そんなふうに貴方をどこかから見ていたんですよ」

「知ってます... いやっ、知らないフリをしていました」

「貴方のご両親も貴方を愛したくて、抱き締めたくて、でもそれが出来なくて辛い思いをしていたんでは
ないですか?」

「はいっ....」

「両親を求めている子供、子供を抱き締めたい親... 離ればなれになってしまったこの親子を
イメージで一つにつなげてあげましょう。 ご両親も貴方を愛したかったのですよ」

「はい...」

「小さな頃、まだ貴方がご両親と一緒にいたころを思い出してください。どこに住んでいましたか? 
お家の周りの景色を憶えてますか? 子供のころによく遊んでいた場所にその子はいます」

「はい...」

「小さな男の子に近付いていってください。そして、『一緒にお家へ帰ろうね』って言ってあげてください」

「はい... 泣きながら私に抱き着いてきます」

「その子の手を引いて、お家へつれて帰ってあげましょう」

「嬉しそうにはしゃいでいます」

施設を出た後、両親から連絡があり「会いたい」と言われたことがあったそうです。

でも彼は“何を今さら”と断ってしまったそうです。

子供のころは仕方ない事情で両親が彼を遠ざけました、でも今は彼が両親を遠ざけています。


「その子はずっと一人だったんですよ。誰かが迎えに来てくれるのをずっと待っていたんですよ。
懐かしいお家の玄関を開けて、その子と一緒に『ただいま!』って言ってください。
お父さんとお母さんに聞こえるように大きな声で...」

「ただいま! お父ちゃん、お母ちゃん、今帰ってきたよ。ただいま!」

「お帰りなさい... そんな声が聞こえませんか?」

「はいっ、聞こえるような気がします。とても懐かしい声が聞こえます.. 」


その後、彼はずっと遠 ざけていた両親に会いに行きました。


彼の両親は事業で失敗し、彼を巻き込むことは出来ないと考え泣く泣く自分の子供を手放したのです。

そして、ずっと彼を遠くから見守っていたのだそうです。

彼の家では相変わらず の“皆そろって頂きます”をやっているらしいですが、 娘さんが遅れて帰ってきても
笑顔で「お帰り」って言えるようになったそうです。

今では7時でも、8時でも笑顔で“頂きます”ができる家族になりました。

彼の心の中ではもう“ 皆で頂きます”は両親を攻撃するものではなくなったのです。

本当はそれを両親も望んでいたのだと感じることができ、両親からのバトンを引き継ぐことができたのです

by exkokoro | 2011-04-13 17:03 | 家族 | Comments(0)

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