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シェルターからの帰還



タイトル:忘れられないカウンセリングエピソード
コラム:舞原 惠美カウンセラー
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「人は自ら苦しみを選ぶこともある。」

と言ったら、どう思われるでしょうか?


苦しみは、大まかに言ってしまうと、「思い通りにならない」事から生じますよね。
自分の欲求と現実のギャップが苦しみの種になります。

自ら苦しみを選ぶとは、このギャップを大事に抱えていることなのです。
これを執着と呼んだりもします。
いくら努力してもどうにもならないと分かったとき、それでも諦められない気持ちです。


「あきらめる」…元来の意味は「明らかに見極める」だそうですが、難しいですよね。

だって、これからのことなんて誰にも分からないじゃないですか。
世の中で「絶対」なのはいつか死ぬことだけなんだから。
どうにもならないなんて、なんで分かるの。
1000回ダメでも1001回目はうまく行くかもしれないし!

こんな気持ちで、諦めないで物事に取り組み、成功することはもちろんあります。
だから見極めが大事ですよね。(どうもうまくいくときっていうのは、状況がどんなに厳しくてもあんまり苦しくない、むしろ楽しめるもののようですよ。エジソンさんなんかは何百回実験に失敗しようとも、いつも次はどうしようかとわくわくしてたそうです。)


そう、これからどうなるかは分からない。
これが希望ともなり、無間地獄の種ともなることがあります。


例えば、恋人に別れを告げられたとしましょう。

離れていったあの人が、いつか戻ってくるかもしれない。
一旦拒否はされたものの、いつかまた自分を受け入れてくれるかもしれない。
いつかは思いが報われるかもしれない。だって、こんなに好きなんだもの。
いつかは…


もちろん可能性はあります。
そこで、理性や知性のある私たち人間は、
あきらめないことで得ることの可能性と、
あきらめないために失っていることの可能性

(他の人との出会いがあっても目に入らない、待ってる間にどんどん年をとっていく、など)
を天秤にかけて、自分にとって大切なほうを選ぼうとします。


でもね~。
冷静に考えればあきらめたほうがいいと頭ではわかっているけど…
そのとおり、さっさとできれば悩みはしないんですよね。
かくいう私もまさしく執着の権化でした。(コラム「浮気男と尽くす女」をご参照ください。(^_^;))


なぜ手放せないのでしょう。こんなに苦しいのに。

「苦しむ」ことで相手とつながっていたいのです。
「痛む」「悲しむ」「恨む」ことで、心の中に相手の存在を残しておきたいのです。


人と一緒にいることで自分に価値を感じている人は、「自分には価値がない」と思いたくないし、
自信のない人は、「こんな私にはもう手に入らない」と、過去に手に入ったものにしがみついてしまい、
怒りを感じている人は「苦しみ」を手放してしまったら、
相手を責める理由がなくなって気持ちのやり場がなくなると思い、
投資したエネルギーと時間を無駄にしたくないと空しい努力を続けることで、
失敗した恥ずかしさを認めなくても済む…。

心にぽっかり穴が開いてしまう空虚感より、
苦しみでもいいから埋めておいたほうが、生きてると感じられたりするのです。



手放すこと、あきらめることは、易しい作業ではありませんね。
ある意味、こんなことはしないで、しがみついているほうが楽なのですね。

向かい合うにはあまりに辛いものを、避けることのできるシェルターと言えるかもしれません。
その中で生きていくのが悪いわけではない。心を守るために必要な時もあります。
そしてまた、勇気を出して飛び出し、もう一度歩みだすことが必要な時もあります。


ご相談者のなかに、果敢にこの「手放し」に取り組んでいる方がいらっしゃいます。
何度もくじけそうになり、「無理だ~」と投げ出してしまいそうになりながらも、
そのたびに、この「シェルター」から現実への帰還を果たそうと挑戦を続けていらっしゃいます。
それは、「自分を大切にする」選択をし続けるということでもあります。


その方は、「自分を大切にする」とはどういうことか分からない状態からの出発でした。
自分のことが信じられないと、不当な扱いを受けていてもそうとは感じられなくなってしまいます。
その方は、徐々にその感覚を取り戻す努力を根気よく続け、
見たくない自分とも向き合い、コツコツと歩んでいらっしゃいます。

粗末に扱われたりすると、以前は怖くて怒りを感じることさえ抑えつけ自分を責めていたけれど、
今は、ちゃんと怒れるようになりました。


決してスムーズにちゃっちゃと進んでいるわけではありません。
行きつ戻りつしながらも、
「自分を大事にできるようになるぞ」という、その方の決意がカウンセリングを支えています。
そのけなげさに、いつも私は励まされます。
人にはこんな底力があるんだと、誰の中にもある「自分を信じる力」への確信が深まります。

どのご相談もひとつひとつ、深い想いを感じて忘れられないのですが、
これは長期的取り組みとなった最初のご相談であり、
戦友のように共に歩んだ体験が深く心に残るカウンセリングとなりました。
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by exkokoro | 2010-09-29 00:00 | 恋愛 | Comments(0)

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